四君子・落款・賛・印
1 四君子の基本
(1)蘭の基本
1 最初は、木炭で軽く下書きをします。
2 一番∼二番∼三番の順に葉を描きその後引き続き回りも短い葉を描く、
3 その後、花びらを描き茎を描き点苔を入れる。
ポイント: 一か所の根元から右方向に描く練習
(2)竹の基本
1 木炭で下書き
2 太い竹を2本描く、節を入れる
3 細い竹の中心の枝、次いで、葉のついている枝を描き、最後に墨の濃い葉から薄い葉を描いていく。
(3)菊の基本
1 下書き
2 花びら中心部から外側に花びらを描いていき、茎を花の萼(がく)から下に描く、蕾も同じ、
3 葉を描いて、葉脈を入れる。
4 竹、草の葉をかく。
5 葉の中にたらしこみ、点苔をいれる。
(4)梅の基本
1 下書き
2 手前の濃い枝から描き、その枝に花びら・つぼみを描き、点苔を入れる。
3 次いで、後ろの枝を同じように描く、ただし、墨は中墨で描き遠近感をだす。
点苔:梅の枝の付け根や、幹の表皮の苔などの状態を表現するとともに、画のなかのリズムをとります。南画独特の表現です。
2 画の署名と落款
(1) 落款とは
「落成款(らくせいかん)識(し)」と言う言葉を略したもので、「落成」は書画の完成を意味し、「款識」は陰陽を表し、署名、捺印のことであります。
落款を入れる場合、初めに年月日を書いて、その後に姓名を入れるのが一般的です。
また、年月は「干支(えと)」で表し、月日は陰暦で呼ぶ月の異称と異節(二十四節気)で書くのが常でありましたが、特に決まりはありません。
ア なにを(内容)‥‥‥‥‥画賛
イ いつ(年月日・季節)‥‥平成丁酉(ひのととり)清明
ウ どこで(場所)‥‥‥‥❍❍庵(あん)・庭園・桃園・書院・旅中等。(必要な場合)
エ なぜ (書いた目的)‥為(ため)井上一郎君 佐藤玉翆畫(作品の依頼を受けて差し上げる場合)
オ 誰が(筆者の姓・雅号) (山田 青雲)・(竹翠 逸人)・(碩田 外史)
(上記の説明)
(ア) 内容‥‥賛は、漢詩・和歌・俳句等
(イ) 年月日・季節‥平成丁酉(ひのととり)清明‥‥南画にふかい風韻を与えます。平成丁酉(ひのととり):2017年、 清明:二十四節気(4月5日頃)
(ウ) 場所‥‥楽易庵(あん)(心が楽しく安らかな庵)、自楽(らく)庵・楽意庵(心を楽しませる) 楽逸(らくいつ)庵(楽しみ遊ぶ)、自楽園(心を楽しませる)、楽思(らくし)園(楽しい思い)、楽道園(道を楽しむ)、‥‥等々
・自宅を謙遜して指す語、(庵)‥草屋・いおり、(亭)‥あばら家、 (居)‥住居、(軒)‥のき・ひさし、転じて家、(洞)‥洞穴、転じて家、
(エ) 略
(オ) 逸人(いつじん):(俗気に染まらない人) ・外史(がいし):(文人などの雅号に添える語) ・散人(さんじん)、散士(さんし)、散史(さんし):(世俗を避けて自適の生活を送る人) ・山人(さんじん):世俗を嫌って山中に隠棲(いんせい)する人等。
(2)賛について
南画は、形象(表に表れているかたち、又、その内的な姿として心に浮かぶ具体的なかたち、(イメージ)を借りて心象(記憶・感覚などに基づいて心の中に描きだされる姿)を描くのを常道とします
従って画技の巧拙(こうせつ)は問題ではなく風韻(ふういん)(風雅なおもむき、みやびやかな味わい)が重視されます。しからば当然、無韻の画に有韻の賛文(漢詩等)が添えられて然るべきでしょう。
画と賛とが不即(ふそく)不離(ふり)(二つのものがつきもせず離れもせず)で両者が相俟(あいまって)、画趣を高揚させ風韻を増すことが大切です。
旧来、賛文は画に劣るものであってはいけないとされます。自画自賛の場合は何ら拘泥(こうでい)する必要はありません。
他人の作品の場合、「良い画だな」と感じても、自らの詩境なり書技なりを未(いま)だしと反省した場合には、勧められても賛を書くことは遠慮すべきでしょう。
模写した場合は、「仿❍❍先生筆意」ぐらいは書き添えるのが良いでしょう。
仿:ホウ(はっきりしはしないが、よく似ていること。)
筆意:書画のおもむき、筆づかい、心構え。
(3) 作品と印の大きさの関係
(サイズの目安で決まっているものではありません。)
(種 類) (一 角) (大きさの範囲 )
ア 短 冊 2分(6mm) 3~6mm
イ 葉 書 2.5分(7mm) 3~10mm
ウ 大色紙 5分 (15mm) 9~15mm
エ 半壊紙 5分 (15mm) 9~15mm (半壊紙:36.5×24.5㎝)
オ 半 切 6分 (18mm) 15~24mm (半 切:35×136㎝ )
カ 聯落 8分 (24mm) 15~30mm (聯 落:53×136㎝ )
キ 全 紙 1寸 (30mm) 20~36mm (全 紙:70×136㎝ )
ク F10号 5分 (15mm) 9~15mm (F10号:45.5×53.0㎝)
ケ F20号 6分 (18mm) 15~21mm (F20号:60.6×72.7㎝)
3 印の種類
* 印章文字は篆書(てんしょ)を使うと古典的な美しさがでます。印材は、青田石・巴(ぱ)林(りん)石・寿(じゅ)山(ざん)石等を用い、木印は避けた方がよいでしょう。)
(1)引首(いんしゅ)印
賛の上方、1字目と2字目の右側の中間又は(2字と3字目の中間) に押す印のことで、関防印(冠冒印)ともいいます。作品の書き出しに押される印です。長方形や楕円形の成語(せいご)印が多く用いられます。
ア 引首印:横0.8㎝×縦2㎝位のサイズに彫ってもらうと色紙~山水画まで使用できます。(白文、朱文いずれも可)
イ 作者の好きな成語、季節のことば、あるいは自分の書斎や画室の名前等を用います。
(成語:詩文の句やことわざ)
(2)姓名(せいめい)印
(氏名印)白文(文字が白抜きになる)
姓名(名字と名前)、氏名を印刻します。名字の漢字が一文字で印のバランスを取るため「印」の字を加えてもよいようです。通常、名字のみの印は使用しません。
(3)雅号(がごう)印
朱文(文字が朱で表れる)
雅号を印刻します。雅号をお持ちでない方は、名前のみ彫刻します。「印」の字は付けないようにします。謹書の場合は、本名を彫刻して印を押します。
(謹書:謹んで書くこと)
・色紙や扇面に押す場合は、朱文の印が印泥色が良い。
・姓名印・雅号印・引首印を三顆(か)印と言います。
(4)押(おう)脚(きゃく)印又は(押角印)
作品の右下又は左下に押す印。成語印・遊印・肖形印等が用いられます。
内容は、作者の座右の銘、芸術の観点、人生の目標や信念を表します。又画のバランスを取るという働きもあります。押脚印が押されている作品は、ていねいに作られたものだということを感じさせます。
・ 一般に山水画は角印、花鳥画は楕円形が合うようです。
(5)成語印
自分を諫(いさ)める語、人生や自然、美についての語、幸福を求める語などの成語が印刻してある印。(成語:昔から多くの人に知られ、しばしば引用される名句やことわざ。)
(6)遊印(ゆういん)
遊印の範囲はとても広く、吉祥語・詩・詩句・成語・吉祥図案印・肖形印などすべて遊印に含まれます。押す場所も特に決まりはなく、画中の弱いところを補ったり、強調する役目があります。豊富な作品に内容と趣を添えるもので、作品のなかに広く使われる印章の形式です。
(7)肖形(しょうけい)印
遊印の一種で、文字ではなく鳥獣などの形を模して印刻てあるもの。
4 実際に用いられている落款例
① 引首印:画賛の一字と二字の間、又は二字と三字の間。
② 上:姓名印(白文):署名の下に1字半か半字あける。
下:雅号印(朱文):白文印の下に1~2印あけた所、
③ 押脚印(押角印) :作品の右下隅か左下隅に押す。